一級建築士資格は、日本の建築業界での最も権威ある国家資格の一つです。
この資格を持つことで、多くの建築設計や監理業務を行うことが可能となります。
一級建築士として経験を積む中で、国内だけでなく海外での活躍を夢見る方もいるかもしれません。
近年、グローバル化が進む中で、海外の建築市場も大きな魅力となっています。
異文化の中での設計や、新しい技術・素材との出会い、さらには国際的なプロジェクトへの参加など、海外での活動は多岐にわたる魅力を持っています。
日本の建築技術やデザインのセンスは、世界中で高く評価されているようですので、海外でも一級建築士として得た知識や経験を活かすチャンスも豊富にあるのではないかと、個人的には思っています。
そこでこの記事では海外に行ったら一級建築士の資格が通用するのか、ついでに、海外では建築士制度がどのようになっているのか調べてみました。
一級建築士資格が海外で使えるのか?
まず、一級建築士資格が海外でそのまま使える資格かについて、
答えは「No」です。
一級建築士として持っている知識は通用するかと思いますが、ライセンスとしては海外では認めてもらえないみたい。
現状一級建築士資格は日本国内でしか通用しないライセンスと言うことです。
ただ、オーストラリアとニュージーランドについては相互認証を締結していて、「APECアーキテクト」への登録、なおかつ、面接審査に合格することにより、建築設計業務を行えるようになっているようです。
このAPECアーキテクトに登録するには一級建築士資格取得後、3年の実務経験が必要です。
詳細は以下のリンクを参照してください。
オーストラリアとニュージーランド以外の国では相互認証のような制度は設けられていないようです。
現状ではこれ以外の国で仕事をしたい時は、その国が定める建築士(建築家)試験制度に基づき、改めてライセンスを取得する必要があります。
以下で、いくつかの国の建築士試験制度をまとめてみました。
世界各国の建築士試験及び建築家制度
世界中には多様な建築士試験や建築家制度が存在します。ここでは、主要な国々の制度をピックアップしてみました。
アメリカ:NCARBとARE試験
アメリカでは、NCARB(National Council of Architectural Registration Boards)が建築士の資格制度を統括しています。ARE(Architect Registration Examination)は、アメリカで建築士として認定されるための試験で、複数の科目からなる厳しい試験をクリアする必要があります。
NAABにより認定された大学建築課程(5年または6年)卒業後、実務経験3年を経過すると受験することができます。
また、この資格は1~2年おき(州により異なる)の更新制となっています。
イギリス:RIBAとARB
イギリスでは、RIBA(Royal Institute of British Architects)がプロフェッショナルな建築家の団体として存在します。ARB(Architects Registration Board)は、建築士としての登録を行う公的な機関です。イギリスでの建築士としての活動には、ARBへの登録が必須となります。
イギリスではpart1~part3までの過程をクリアすると建築士としての資格が取れるようです。
part1:教育課程3年間
part2:教育課程2年間+2年以上の実務経験
part3:専門実務試験
イギリスの建築士資格も更新制となっていて、更新期間は1年となっています。
ドイツ:Architektenkammer制度
ドイツには各州ごとにArchitektenkammer(建築家会議)が設置されており、この組織が建築士の資格制度を管理しています。ドイツで建築士として活動するためには、所属州のArchitektenkammerへの登録が必要です。
大学で建築学等を(3~5 年)履修後、2~3 年の実務経験を得るとArchitektenkammerへの登録申請することができます。
日本のような建築士試験制度はありません。学校を卒業して実務経験を積むと建築家として登録できます。
しかし、上記のような学歴がない場合でも建築家として登録することができます。
その場合は2~3 年の実務経験を経た後、試験を受験、この試験に合格すると登録申請が可能となります。
ドイツの建築士資格は日本と同じで更新制ではありません。
フランス
フランスで建築家として仕事をするにはフランス建築家協会への登録が必要となります。
そのためにまずは大学で建築学の学位(DEA)を取得する必要があります。
DEA取得までに最短で6年かかります。(第6学年次、最低150時間の倫理教育と6ヶ月間の職業研修がある)
DEA取得すると、Conseil national de l’ordre des architectes(フランス建築家協会)に建築家としての登録申請が可能になります。
日本のような建築士試験制度のようなものはありません。学校を卒業すると資格が与えられるシステムになっています。
また、フランスの建築士資格は更新制となっていて、更新期間は1年となっています。
上記の国々以外にも、各国独自の建築士試験や制度が存在します。下記に参考にしたデータへのリンクを載せておきます。
このサイトの中に各国の試験制度をまとめたPDFファイルがあるので、そちらを見ていただけると詳細がわかります。
まとめ
海外で建築士として仕事をする場合は、基本的にその国の建築士資格を取る必要があることがわかりました。
建物の構造にしろ、法規にしろ、計画にしろ、それぞれの国で考え方も違うので当たり前と言えば当たり前ですかね。
各国での建築技術のレベル差みたいなものもあると思うので、簡単に相互認証みたいなものを認めるわけにはいかない事情もあるのかもしれません。
現実路線を考えると、海外で仕事をすることを考えた時、仕事をしたい国の設計事務所に就職する、もしくはコラボするってことになるのでしょうか。
でも、これだけグローバル化が進んでるわけなので、もう少し世界を相手に仕事がしやすい環境になれば、建築士という仕事がより魅力的な仕事になるんじゃないかと思いました。