2020年に建築士試験の制度が変わったときに「大学生でも一級建築士試験を受けられるのか」「学生のうちに合格したらどうなるんだろう」という話を聞きました。
受験できる時期は進路を考えるうえでも気になるところです。
そこで、大学在学中の受験と合格後の免許登録について改めて確認してみました。
確認したところ、大学生でもすでに受験資格になる学歴や資格を持っていれば一級・二級建築士試験を受けられる場合があることがわかりました。
ここで気をつけたいことは、建築士試験に合格することと建築士として免許登録することは別物であること。
また、普通高校から大学へ進んでその大学の卒業によって受験資格を得る人と、対象となる短大や高専などを卒業して編入した人では受験できる時期が違います。
大学生だから受けられる・受けられないと一括りにするとこのあたりがよく分からなくなるんですよね。
さらに、2026年7月31日には一定の条件を満たす学生の在学中受験を認める改正法も公布されました。
改正が続く受験資格ですが、この記事では2026年9月現在の大学生の受験資格についてまとめていきます。
- 大学在学中に受験できる人と卒業を待つ人の違い
- 二級・一級建築士の試験合格と免許登録の条件
- 2026年公布の改正で変わることと開始時期の確認先
- 編入や進学を考えるときに学校へ確認したいこと
まずは大学在学中の受験資格をチェック
受験資格・試験合格・免許登録について
建築士の資格を取るというと、試験に受かることと免許を受けることが混乱しがちです。
まずはこのあたりをしっかり区別しておきましょう。
この記事では次のように分けます。
- 受験資格
建築士試験を申し込むための条件 - 試験合格
学科と設計製図の試験に合格した状態 - 免許登録
合格に加え、必要な実務経験などの条件を満たして登録の手続きをすること
これらの段階をクリアするために1級・2級それぞれに条件が設定されていて、これをクリアしなければ次のステップに進めません。
当然のことながら、受験資格をクリアしなければ受験はできません。
結構勘違いしている方もいるのですが、試験合格したら一級建築士になれるわけでもありません。
試験合格は一級建築士として名乗るための「権利」を得ただけの状態であってまだ名乗れないのです。
免許登録が完了して正式に一級建築士として実務ができるようになります。
まずはこの3段階をきっちりと理解してください。
各段階をクリアするための条件は後ほど詳しくまとめます。
指定科目の履修が必要
学歴で受験する場合、2026年のJAEICの案内では指定科目を修めて卒業することが必要となります。
大学に入ったことや必要そうな単位を先に取ったことだけではこの卒業条件を満たしたことにはなりません。
今受験を検討している学生の方は下記の公式サイトで履修科目のチェックをしておきましょう。
なお、2009年度(平成21年)以降の入学者と2008年度(平成20年)以前の入学者では学歴要件の確認方法が異なります。
昔卒業した学校の学歴を使う人は入学年度も合わせて確認してください。
ここから先は、2009年度(平成21年)以降の入学者の受験資格を元に話を進めます。
2008年度(平成20年)以前の入学者の方は下記の公式サイトを参照してください。
参考:建築技術教育普及センター公式Webサイト「一級建築士の受験資格」「二級・木造建築士の受験資格」
大学在学中に二級建築士になれる?
まずは受験できるかを確認
まずは受験資格があるのかどうかの確認をしてみましょう。
| 受験資格の区分 | 試験時の実務経験 |
|---|---|
| 大学・短大・高専・高校・専修学校・職業訓練校等で指定科目を修めて卒業した人 | 学校・単位条件によって異なる。最短0年 |
| 建築設備士 | 0年 |
| 外国大学卒業者など、都道府県知事が特に認める人 | 所定の年数 |
| 建築に関する学歴がなく、実務経験で受験する人 | 7年以上 |
上記の表にあるとおり、現在通っている大学の卒業によって初めて受験資格を得る場合は在学中に受験することができません。
受験ができないということは、試験合格ができないということでもあるので、その先の免許登録に進めない。
つまり、2級建築士にはなれないということです。
【例外】短大・高専から3年次編入した大学生は在学中に二級建築士になれる場合がある
もう一度受験資格の表を見てほしいのですが、「大学・短大・高専・高校・専修学校・職業訓練校等」と書かれています。
つまり、大学でなくても、短大・高専・高校・専修学校・職業訓練校等で所定の科目を履修して卒業すれば受験資格が得られるということです。
たとえば、指定科目などの条件を満たして短大や高専を卒業して3年次編入を使って大学に入学した人。
このような方は、短大や高専での卒業と同時に受験資格を得ているので、大学在学中に二級建築士試験を受けることができます。
また、免許登録についても、所定の科目(40単位)を全て履修している方であれば実務経験が必要ないので、在学中に二級建築士として免許登録まで終えることができることになります。
後ほど触れますが、3年次編入の方でも、所定の科目が40単位未満の場合は必要な卒業後の実務経験を満たしていなければ免許登録できないので注意してください。
免許登録時に必要な実務経験
ここで免許登録時に必要な実務経験について見ておきます。
| 学歴の例 | 指定科目の合計 | 受験時の実務経験年数 | 登録時の実務経験年数 |
|---|---|---|---|
| 大学・短大・高専等の卒業者 | 40単位 | 0年 | 0年 |
| 同上 | 30単位 | 0年 | 卒業後1年 |
| 同上 | 20単位 | 0年 | 卒業後2年 |
| 高校の卒業者 | 20単位 | 0年 | 卒業後2年 |
| 同上 | 15単位 | 卒業後1年 | 卒業後3年 |
| 高校卒を入学資格とする専修学校等の2年以上の課程の卒業者 | 40単位 | 0年 | 0年 |
(2026年9月現在)
表の「大学・短大・高専等」には、公式表にある職業能力開発総合大学校・職業能力開発大学校・職業能力開発短期大学校も含まれます。
この単位数は、建築設計製図や建築計画など指定科目の内訳も満たすことが前提です。
卒業に必要な単位を何でも40単位取ればよいという意味ではありません。
指定科目を正しく履修しているかどうか確認が必要です。
先ほど少し触れましたが、指定科目の履修が40単位未満の方は必要な卒業後の実務経験を満たしていなければ免許登録できません。
また、実務経験は「卒業後」の実務経験からカウントが始まるので注意してください。
登録手続きについての詳細は日本建築技術教育普及センター公式Webサイトの二級建築士試験ページ「合格者の方へ」から確認できます。
大学在学中に一級建築士になれる?
まずは受験できるかを確認
まずは受験資格を確認してみましょう。
| 受験資格の区分 | 試験時の実務経験 |
|---|---|
| 大学・短大・高専・専修学校等で指定科目を修めて卒業した人 | 0年 |
| 二級建築士 | 0年 |
| 建築設備士 | 0年 |
| その他国土交通大臣が特に認める者 (外国大学を卒業した者等) | 0年 |
上記の通り一級建築士試験では、対象となる大学・短大・高専・専修学校等を所定の条件で卒業した人のほか、二級建築士、建築設備士、国土交通大臣が特に認める人などに受験資格があります。
大学生の場合は原則卒業後に受験資格を得ることができます。
現在通っている大学の卒業によって初めて受験資格を得る場合、今の制度では卒業前に一級建築士試験を受験することはできません。
先ほど、短大や高専を卒業して4年制大学へ編入した場合の話をしましたが、この人が二級建築士として免許登録をした場合は大学を卒業する前に受験できる場合があります。
ただし、一級建築士については免許登録の際に実務経験が必要になります。
詳細は後ほど詳しくまとめますが、編入して在学中に一級建築士試験を受験して合格したとしても、必要な実務経験を満たしていない場合は免許登録ができないのでこちらの場合も在学中に一級建築士になることはできません。
また、大学院に進んだ方は、大学卒業時に受験資格が取れるので大学院在学中に受験は可能です。
しかし、必要な卒業後の実務経験を満たしていない方は、大学院在学中に一級建築士になることはできません。
一級の免許登録には実務経験が必要
一級では学歴等に応じた実務経験を登録時に確認されます。
主な学歴区分の年数は次のとおりです。
| 学歴の例 | 指定科目の合計 | 受験時の実務 | 登録時の実務 |
|---|---|---|---|
| 大学等の4年制区分 | 60単位 | 0年 | 卒業後2年 |
| 同上 | 50単位 | 0年 | 卒業後3年 |
| 同上 | 40単位 | 0年 | 卒業後4年 |
| 3年以上の短大・専修学校専門課程 | 50単位 | 0年 | 卒業後3年 |
| 同上 | 40単位 | 0年 | 卒業後4年 |
| 2年以上の短大・高専本科・対象の専修学校専門課程等 | 40単位 | 0年 | 卒業後4年 |
(2026年9月現在)
上記の表は、指定科目の内訳を満たした卒業者について必要な最低年数を示しています。
二級建築士同様、「卒業後」の実務経験がカウントされることに注意しましょう。
在学中に受験を認める改正建築士法が公布!学生のうちに勉強するメリット
卒業見込みの学生も受験が可能になりそうです
大学等で指定科目の単位を修得し、試験が行われる年度の末日までに卒業する見込みの人について、在学中に受験ができるようにする旨の内容を含んだ改正建築士法が2026年7月31日に公布されました。
一級だけでなく、二級・木造にも在学中受験に関する改正があります。
二級・木造では工業高校等も対象です。
国土交通省の概要資料では、一定の単位取得と最終学年で卒業見込みであることが条件と説明されています。
大学生なら何年生でも受けられるようになるわけではなさそうです。
改正建築士法に関する詳細は下記の国土交通省公式サイトを確認してください。
国土交通省「建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)について」掲載の改正概要・法律本文(附則第1条)
実際に受験できるようになるまでもう少し時間がかかりそう

やった!じゃあ来年の試験受けようかな。
そう考える大学生の皆さんもいたかもしれません。
しかし、この改正建築士法は、公布から3年を超えない範囲で政令で定める日から施行されるとなっています。
つまり、この法律がいつ試験に適用されるのかはまだわからないので注意してください。
ちなみに、以前の2020年改正で実務経験を受験時ではなく登録時に確認する仕組みへ変わりました。
このブログでもその改正内容について取り上げましたが、この法改正で受験者数が増えて、かつ、合格者の年齢層が若干若くなった印象を受けました。
今回の改正でまたこの傾向が進みそうな感じです。
2020年の法改正を取り上げたブログ記事は記録として残してあるのでご興味ある方は読んでみてください。


学生のうちに勉強するメリット
自分としては条件が合うなら早めに試験勉強を始めることには意味があると思っています。
就職してから仕事と勉強を両立する負担を減らすことができるからです。
大学での勉強やゼミ活動、研究、就職活動など、大学生もいろいろ忙しいとは思います。
でも、社会人になってからの忙しさとは質が違うのです。
お金をもらって仕事をする以上、それなりの責任も伴うし、新しい人間関係の中で、新しい仕事をひとつずつ覚えながら毎日を過ごす。
慣れ親しんだキャンパスライフの中で感じる忙しさとは精神的な面において全く違うのです。
そのような新生活で疲弊した中、難関資格である一級建築士試験の勉強が満足にできるでしょうか。
僕は現場管理担当として社会人デビューしましたが、入社して3年くらいは仕事でずっと現場に張り付いていたのでとても試験のことを考える余裕もありませんでした。
ちょっと余裕が出てきたかなと思い始めた頃に受験勉強を始めたわけですが、さすがは難関試験だけあって、覚えることはたくさんあるし、内容は理解に苦しむことばかり。
仕事を理由に勉強から逃げたりもしてずるずると受験を続けることになった経験があります。
そんなわけで、僕個人的にはぜひ学生のうちにある程度勉強を進めることをおすすめしたいです。
学科対策は時間を細切れに使っても何とかなりますが、製図試験対策はまとまった時間が取れないとなかなか苦しいところがあります。
どの資格にも言えることですが、資格は早めに取った方が間違いなく有利なのです。
もし在学中に受験が可能になった時は、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
大学在学中の受験についてよくある質問
在学中に一級・二級建築士になれるかについてまとめます
以上、大学在学中に建築士資格が取れるかどうかについてまとめてきました。
すでに別の学歴・資格・実務経験などで受験資格を満たしている人は在学中でも受験できます。
また、現在通っている大学の卒業によって初めて受験資格を得る人は今のところ卒業前に受験することはできません。
でも、改正建築士法によりいつになるかわかりませんが在学中に受験が可能になる時が来ます。
僕が受験を始めたときはまだ受験資格に実務経験が必須の時期でした。
そんな僕からすると在学中に受験できるなんていいな~と感じてしまいます。
人生全体を考えても年齢を重ねるほどに仕事や家族内での役割が増えてきます。
そのために、自分が自由に使える時間がどんどん削られてしまう。
また、勉強することに日常的に慣れている学生時代の方が勉強も進めやすいと思うのです。
なので、資格は取るのなら早く取ったほうがいいと個人的に考えています。
ちなみにですが、今僕が製図試験でお世話になっている資格学校のTACでこんなコースがあることを知りました。
このコースは学生限定のコースで、一度学費を払えば学生の間は何度も講義を受講できるコースとなっています。
ただ、学科のみのコースとなっていて、製図講義は含まれていないことと、2年目以降教材費は別途必要になることだけは注意が必要です。
大学1年生から大学院卒業まで在籍できます。
なので、1年生のうちからスタートして4年生まで毎年講義を受講して大学卒業後の7月にある学科試験に挑む、なんてこともできるのです。
ここまではやりすぎかもしれないけど、制度上はこういうこともできるので学生の皆さんはぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。


