
一級建築士試験の合格率はなぜこんなに低いのか。
僕は2024年度に学科試験に合格できました。
ただ、学科合格までの道のりはとても険しかった。
このブログの中でも愚痴っているかのごとく苦労した様を書いてきました。
特に、構造と環境・設備の理解に苦しむところも多かったし、過去20年分の問題にも取り組みましたが、結局、全部はやり切れませんでした。
合格率が低いことは最初からわかっていたので、数字そのものを見て不安になることはあまりなかったです。
この試験は、問題の難度に応じて合格基準点が調整される試験ということもあり、勉強と受験を続ける中で合格率と自分が感じる問題の難しさは別物だと思うようになりました。
この記事では試験元が出している試験結果と合格基準を確認しながら、自分が学科合格までに苦労したこと、合格した年に変えたことをまとめてみます。
- 学科試験と製図試験の合格率の違い
- 合格基準点と問題の難易度の関係
- 僕が学科の勉強で苦労したことと変えたこと
- 受験回数や勉強量の数字を見るときの注意点
一級建築士試験の合格率はなぜ低いのか

一級建築士試験の合格率
まずは一級建築士試験の合格率を見ていきましょう。
2026年の学科試験は、実受験者29,094人に対して合格者7,619人、合格率は26.2%でした。
出典:国土交通省Webサイト報道発表資料「令和8年一級建築士試験「学科の試験」合格者を決定」
学科と製図の両方が終わっている2025年までの結果は次のとおりです。
| 年 | 学科(受験/合格/率) | 製図(受験/合格/率) | 総合合格率 |
|---|---|---|---|
| 2019 | 25,132人/5,729人/22.8% | 10,151人/3,571人/35.2% | 12.0% |
| 2020 | 30,409人/6,295人/20.7% | 11,035人/3,796人/34.4% | 10.6% |
| 2021 | 31,696人/4,832人/15.2% | 10,499人/3,765人/35.9% | 9.9% |
| 2022 | 30,007人/6,289人/21.0% | 10,509人/3,473人/33.0% | 9.9% |
| 2023 | 28,118人/4,562人/16.2% | 10,238人/3,401人/33.2% | 9.9% |
| 2024 | 28,067人/6,531人/23.3% | 11,306人/3,010人/26.6% | 8.8% |
| 2025 | 27,489人/4,529人/16.5% | 11,381人/3,988人/35.0% | 11.4% |
この表の期間では、学科は15.2〜23.3%、製図は26.6〜35.9%、総合は8.8〜12.0%。
2026年の学科26.2%まで含めると学科の割合も変わっています。
学科は毎年必ず2割とか決まっているわけではありません。
また、学科の合格率と製図の合格率を掛けても、公表されている総合合格率にはなりません。
製図には、その年の学科合格者だけでなく過年度に学科を合格して免除を受けている人もいるからです。
2025年の総合合格率は、その年に学科から受験した人と製図から受験した人を合わせた35,127人を分母に、最終合格者3,988人を割った11.4%です。
同じ人たちを学科から製図まで追いかけた割合とは違います。
これを「初受験で一発合格する確率」や「自分が最終的に合格できる確率」と読み替えない方がよいでしょう。
学科は総得点だけ高くても合格できない
学科には、計画、環境・設備、法規、構造、施工の5科目があります。
得意科目だけで点数を稼げばよい試験ではなく、科目ごとの基準と総得点の基準を両方満たす必要があります。
例えば、2026年の合格基準点は以下のとおりでした。
| 科目 | 満点 | 合格基準点 |
|---|---|---|
| 計画 | 20点 | 11点 |
| 環境・設備 | 20点 | 11点 |
| 法規 | 30点 | 16点 |
| 構造 | 30点 | 16点 |
| 施工 | 25点 | 13点 |
| 総得点 | 125点 | 94点 |
総得点が94点を超えていてもどれか1科目が基準に届かなければ合格にはなりません。
逆に、各科目の合格基準点ぎりぎりでは総得点が足りないのでそこから点数を積み上げる必要があります。
自分の場合は構造と環境・設備の内容を理解するのが難しかったので、苦手だから後回しで済ませられないところが大変でした。
広い範囲を勉強しながら苦手科目も置いていけない。
この負担は実際に取り組んで感じたところです。
合格率と問題の難易度は別物と考えた方がいい
一級建築士の学科は「相対評価の試験」と言われています。
受験生の多数が解ける問題での失点は命取りになりかねないため、このことを意識しながら勉強していました。
2026年の試験元が発表している合格基準点では、科目ごとの過半の得点と総得点おおむね90点を基本的な水準としつつ、問題の難度を踏まえて基準点を設定したと説明されています。
この年の総得点の基準は94点でした。
難しい問題が多い年は、自分だけが解けていないわけではなく他の受験生も同じように解けていない。
また、反対にやさしい問題が多い年なら、自分以外の受験生も点数を取っている。
ゆえに、試験の難易度を気にするよりは、すべての受験生の中でなるべく上位に潜り込むことを意識しましょう。
そのためには、先ほども触れましたが、受験生の過半が解ける問題を確実にできるようにしなければならないのです。
ちなみに、僕が合格した2024年は自己採点が93点でした。
その時に、各資格学校が出した予想が94点とか出てて、これはギリギリアウトなパターンかと結果発表日まで落ち着かない日々を過ごしましたが、正式な総得点の基準は92点で、無事学科に合格できました。
学校の予想が外れて良かったという経験をした年でした。
当時の記録は下記の別記事に残してあるので興味のある方は読んでみてください。

製図では条件を満たして完成させる力が必要
学科を通過したら、そのまま一級建築士試験の合格というわけではありません。
設計製図では、与えられた条件を読み取り計画して図面や記述にまとめる力が問われます。
2025年の公式の採点基準には、必要な図面の欠落、図面同士の重大な不整合、要求された室の欠落、法令への重大な不適合などが挙げられています。
きれいな図面を描くだけではダメなのです。
自分はいまも製図の勉強をしていますが、最初は作図だけで8時間ほどかかっていました。
練習を続けて今では約3時間まで短くなってきたとはいえ、僕が目標作図時間としている2時間30分まで、あと30分短縮しなければなりません。
描く時間を縮めながら条件を見落としていないかも確認する。
学科で知識を覚えるのとは違う難しさがあります。
学科は移動時間などの細切れの時間を使って勉強することができますが、製図の勉強はある程度まとまった時間が必要になるので、その点を考えてもなかなか難しい試験だと思っています。
一級建築士の難易度と他資格の難易度を比べてみた
以前、ほかの資格とどのくらい難しさが違うのか気になって、「資格の取り方」の国家資格難易度ランキングを見てみました。
一級建築士は66という数値で紹介されています。
比較例として掲載されている数値は、次のようなものです。
| 偏差値 | 資格名 |
|---|---|
| 77 | 司法試験 |
| 77 | 公認会計士 |
| 76 | 司法書士 |
| 75 | 税理士 |
| 74 | 医師 |
| 74 | 不動産鑑定士 |
| 67 | 中小企業診断士 |
| 66 | 一級建築士 |
| 65 | 社会保険労務士 |
| 64 | 土地家屋調査士 |
| 62 | 行政書士 |
| 57 | 宅建士 |
| 56 | 二級建築士・木造建築士 |
| 55 | 一級建築施工管理技士 |
出典サイトにも書かれていますが、これはそのサイト独自の難易度指標です。
一級建築施工管理技士を持っている自分としては、その数値がもう少し高くてもいいのではと思ったのですが・・・。
こういう感じ方が人によって違うことも、数字だけで比較しにくい理由なのだと思います。
受験資格、出題範囲、試験方式、これまでの仕事や勉強とのつながりも違います。
ほかの資格の合格率が低いから自分にとっても必ずそちらが難しいとは限りません。
社会的役割と合格率
建築物の安全性や使いやすさ、周囲の環境との関係を考えることは、建築士の仕事に関わる大事な役割です。
省エネルギー、災害への備え、地域の景観や歴史への配慮など、設計で考えることはたくさんあります。
例えば、使うエネルギーを抑えながら過ごしやすい建物を考えたり、さまざまな人が利用できる動線を考えたりすること。
そうした役割や資格の魅力については以下の別記事でも触れています。

ここから先は僕の個人的な意見として読んでほしいのですが、建築が与える社会的役割というのはとても大きいものです。
よって、この仕事をする人は、数多くの知識と技術が必要で、なおかつ、強い責任感も求められます。
こうした背景から一級建築士の資格を取得するための試験は意図的に難易度が高く設定されているんだろうと考えています。
この厳しい試験を通過することによって、一級建築士になってから直面するであろう数々の課題に対応できるだけの力がありますよということを証明することになるからです。
さらに、一級建築士には専門知識だけでなく倫理観や責任感も同様に重要と思っています。
これらの要素は、建築士がそのキャリアを通じて直面するであろう多くの挑戦に立ち向かうための基盤となるのです。
合格後の収入やキャリアは働き方でも変わる
難しい試験に挑戦する以上、取得後の仕事や収入が気になる人もいると思います。
設計や工事監理などの仕事にどう生かすか、勤務先の資格手当や担当業務がどう変わるかは、勉強を続ける理由にもなるでしょう。
ただし、資格があれば必ず年収が上がる、管理職になれる、独立してうまくいくという話ではありません。
任される仕事、経験、勤務先の制度、独立するなら依頼を得られるかなど、いろいろな要素が関係してくるからです。
年収の統計を見る場合も、「一級建築士の有資格者」なのか「建築設計などの職種で働く人」なのかで対象が違います。
条件の違う数字をひとまとめにして資格を取ればその金額になるとは考えない方がよいです。
なお、試験に合格することと免許登録も別の段階です。
試験合格者数を、その年に新しく登録された一級建築士の人数と読み替えることはできません。
免許登録については以下の別記事でまとめているのでこちらも参考にしてみてください。

合格率の低い一級建築士試験に向けて自分が変えたこと

ここからは自分の学科試験の勉強を振り返ります。
合格者全員に共通する必勝法ではありませんが、範囲が広すぎて終わらないという人には同じようなところがあるかもしれません。
理解できないところと過去問の量に苦労した
構造と環境・設備は、内容を理解することがとても難しかったです。
理解してから覚えるのが基本だと思っているのですが、どうしてもわからない部分が残りました。
そういう部分は、理解することをいったん諦めて無理やり覚える方法で進めました。
もちろん、丸暗記が良いと勧めたいわけではありません。
理解することにこだわってしまって勉強が進まなくなってしまったり、勉強自体がイヤになってしまうことにならないために、仕方なく取った対応でした。
もう一つ大変だったのが過去20年分の問題量。
学科試験合格まで速学や合格ロケットを使って何年か勉強していましたが、その量があまりにも膨大で、教材に収録されている問題を全部やり切れなかったです。
でも、20年分終わらなかったから合格できないとまでは思わなくてよいと思います。
僕がやり切れずに合格したことを理由に誰にとっても20年分は不要だと言いたいわけではないのですが、いきなり20年分と意気込むのではなく、まずは10年分からやってみたら良いのではというのが僕のおすすめ。
最初に直近10年分をきっちり固めると、しっかり知識の入った状態で過去11年~20年分の問題に取り組めるので実力チェックにもなるし、問題を解くのに最初の10年分よりは速いペースで進めることができるからです。
ちなみに、速学と合格ロケットを使ってみての感想は以下の別記事に書いたので気になる方は読んでみてください。

合格した年は勉強量を増やした
以前は、仕事を理由に勉強が疎かになってしまうことが多かったです。
合格した年に何を変えたのかと聞かれると、まずは単純に勉強する量を増やしたことだと思います。
具体的に何時間増えたとまでは言えませんが、例年に比べて勉強量は多かったという実感があります。
仕事をしながら時間を作るのが大変なのは自分もわかります。
なので、毎日何時間やればいいと書いて終わるのも違う気がしています。
まず、自分の生活の中での時間を棚卸しして、勉強に使える時間を捻出してみましょう。
家族や職場に試験のことを伝える、家事の分担や予定を相談する、付き合いの予定を調整するなど、周囲の協力を得ることができる方は有効に使うべきです。
合格した年は直前講習を利用した
お金の問題もあって速学、もしくは、合格ロケットだけを使って勉強していましたが、合格した年は資格学校の直前講習を受講しました。
これも例年とは違ったところです。
合格した年はメイン教材は速学だったので、あくまでも普段の勉強は速学を使いつつ、試験日1ヶ月前くらいから速学に合わせて直前講習を活用した感じです。
講習を使おうと思ったのには二つ理由がありました。
1つ目はアウトプットの練習。
どこの資格学校でもそうだと思うのですが、僕の受講した直前講習はテストゼミというかアウトプット重視の講習になっていました。
速学では一つの選択肢に対して○か×かを判断する方法で勉強していましたが、実際の試験は4つの選択肢の中から一つの間違いを見つける出題形式になっています。
この形式で問題を解く練習をするために直前講習の問題を活用しました。
2つ目は受験生の過半が正答を出している問題を知りたかったから。
先ほどから受験生の過半ができる問題は確実に解けるようにならないといけないということを書いてきましたが、独学だとその問題がどの問題なのかを把握することが難しいのです。
速学も合格ロケットもそこまでの記載はありません。
でも、僕が受講した直前講習では同じテストを受けた受講生の結果をまとめて、問題の正答率がわかるデータをもらえたのです。
これがとても役に立ちました。
正答率が高いのに間違っていた問題を集中して復習することで直前期にかなり効率的な勉強ができたと思っています。
合格までの期間と受験回数は分けて考える
何回くらい受ければ合格できるのかも気になるところだと思います。
こんなデータがあったので参考までに紹介してみますが、資格取得エクスプレスの建築士合格者アンケートでは、約75%の回答者が3年未満の学習期間で合格したと紹介されています。

記事の表記は「建築士」であり、一級建築士だけの結果なのかはわかりません。
また、調査対象は学習期間であって受験回数でないことも付け加えておきます。
ちなみに、僕は8回目の学科試験で合格できました。
自分が仕事でお付き合いのある建築士さんに聞いたときも、一発で合格した人もいれば、4回くらい受けたという人もいました。
勉強することだけに人生の時間を使うことはもったいないと思うので、できることなら短い時間に集中して一気に勉強して合格をさらっていきたいところですよね。
あと、製図試験については学科免除の条件も確認しておきます。
2020年以降の学科合格者には、学科合格年度と翌年以降4回の試験(全5回)のうち3回の試験について、学科免除を受けられる仕組みがあります。
学科試験に疲れてその年の製図試験はパスしたいという方もいるかもしれません。
そんな方は翌年の製図試験から参加することも可能です。
制度の詳細は日本建築技術教育普及センター公式Webサイトの試験案内を参照してください。
ちなみに、僕は合格した年の製図試験(テーマは大学)は見送りました。
学科が終わって合格予想基準点から1点足りなかったものの、一応製図対策は行っていたのですが、試験日1日前になっても提出する答案を全て完成させるのに8~10時間程度かかってしまっていたので、これはチャンスを一つ無駄にしてしまうと考えて見送る決断をしました。
一級建築士試験についてよくある質問
最後に一級建築士の合格率がなぜ低いかについてまとめます
一級建築士試験の合格率を理解するには、学科と製図それぞれの基準、受験する人の違い、年度ごとの結果を分けて見る必要があります。
個人的には、社会的責任が重い資格だからという側面もあるのではと考えています。
僕が学科合格までに苦労したのは、構造や環境・設備の理解と、過去問の膨大な量でした。
合格した年もすべて理解して20年分を完璧に終えたわけではありません。
例年より勉強量を増やし、直前講習も利用して、多くの受験生が解ける問題を落とさないことを意識しました。
合格率を見て不安になることもあるかもしれませんが、その数字だけで自分の合否が決まるわけではありません。
今の自分が落としている問題や時間を使えていないところを一つずつ確認する。
試験の仕組みを考えれば、学科も製図も過半の受験生ができていることがしっかりできれば合格が一気に近づくはず。
基本に立ち返ってしっかり勉強を続けて行こうと改めて思いました。


